わたしの音楽体験とアニメ

わたしの音楽体験という表題ではあるが、わたしは音楽について大した手続きを踏んだことはない。クラシックも、ジャズも通っていない。ただ、アニメソングと、歌謡曲と、少しのロックだけだ。

村上春樹は自分から音楽を聴き始めた時期を覚えているらしい。それは中学校に入った頃らしい。わたしはもっと遅い。高校に入ってからだ。

それまでは、音楽を意識して聴いたことはなかった。「この曲いいな」と思うことはあった。でもそれは、メロディのしっぽを捕らえただけ。大衆音楽すら心から愛したことなんてなかった……。

それがなぜ、高校生になって変わったのだろうか。きっかけは多分、田家秀樹という人が著した『読むJ−POP』(朝日文庫刊)を読んだこと。それで何故だか、はっぴいえんどシュガーベイブに興味を持った。この国で現在流れている音楽の成り立ちを知りたかったのだ。現代日本のロック/ポップスのルーツを勉強したかったのだ。

初めて買ったCDはシュガーベイブの『SONGS』、その次にはっぴいえんど『風街ろまん』を、そしてサディスティック・ミカ・バンド『黒船』を買った。

そして同時代の『ロキノン系』と呼ばれる一群、果ては洋楽にもハマっていくのだが、これを話したらきりが無いので別機会に譲ろう。



音楽体験はアニメを考え、語るのに有効に働く。音に敏感になる。創作の流れに敏感になる。リズム、テンポ、そして脚本家が奏でる旋律に。

わたしの場合高校時代にアニメを観るのを中絶しCDを毎週レンタルして聴いたことが、少なからず「音の置き方」という概念を導くのに役立った。

いま、部活サークルで軽音楽や吹奏楽などをやっている人、自分で演奏しなくとも音楽を愛し良きリスナーであろうとする人。あなた達がアニメに関心があるのならば、ぜひアニメに関しても見識を深めてほしい。あなた達は、音楽に関してもアニメに関しても何かを産み出せる大きな可能性を秘めているのだから……。