キャラの名前/顔と名前の一致/馴染むキャラ/馴染まないキャラ/馴染まないアニメ/馴染むアニメ

アニメファンは、通例、複数のTVアニメを並行して視聴する。1クールにつき3番組くらいという人もいれば、60番組ぐらい(つまりほとんど全番組だが)の多くの量を摂取する、いわゆる「多量見」という方もおられる。

「多量見」派に対して、同時に何十番組も並行して観ていて、そんなやり方で、例えば「各番組のキャラの名前を果たして覚えていられるのか?」というような疑問を抱くことがある。

どうも、何十番組も並行して観るというやり方に対しては、ひとつひとつの番組への取り組む態度が浅くなる、という懸念が払拭できない。
いや、それでいいんですよ。何十番組も並行して観ていて、それでアニメライフが楽しいのなら。これは「多量見」派を批難するためのつぶやきではない。

かくいうわたしだって、「多量見」派の方には敵わないけど、2桁のアニメ番組を並行して観ていますし。
そういえば最近、正確になん番組同時に観ているかなんて計算したことないなあ。

話がそれかけた。
わたしは2007年4月に上京して、2桁のアニメ番組を並行して観るようになった。ただ、特に上京したての頃、たいていの番組は、途中で脱落してしまっていた。都会のアニメの洪水に適応できなかったのであるが、あれ? こんな話、いつかどこかでしたことあるな。

最近では、「アニメ視聴の呼吸」もだいぶわかるようになり、10番組くらいなら捌けますよ……と、胸を張って言えるほどではないが、それでも10番組くらいなら同時にTVアニメを捌くことができるようになった、ようである。

TVアニメの捌き方には、だいぶ自信が出てきた。それはいい。
でも、TVアニメを「捌く」ということと、TVアニメを「観る」ということは、どうもイコールではないように思いますがね……。

あなたは、どれだけのTVアニメを、冷静に観られますか?
そして、同時期のTVアニメに登場するアニメキャラの名前を、どれだけ覚えられますか?

アニメキャラの名前、ちゃんと覚えられますか

苗木野そら、レイラ、ユーリ、ケン、ミア、アンナ、カロス、サラ、マリオン、ジョナサン、ロゼッタ、メイ、レオン。
これらは『カレイドスター』というTVアニメのレギュラーキャラの名前である。これくらいなら、わたしは、直ちにキャラの名前を列挙することができる、何も見ずに。ただしこれは極端な例である。なぜなら『カレイドスター』はわたしにとって一番特別なアニメ作品であり、12年間にわたって観続けている、馴染み続けているアニメだからだ。
カレイドスター』くらい自分にとって特別なアニメならば、何も見ずに、主要キャラの名前を列挙することができるのだが、例えば、自分にとってまだ馴染みの薄いアニメの場合、主要キャラの名前を何も見ずに列挙することは難しいだろう。

例を挙げると、今期『艦隊これくしょん −艦これ−』という深夜アニメがやっていますよね。これは超人気ブラウザゲームが原案で、軍艦を擬人化した「艦娘(かんむす)」という美少女キャラが大量に登場する。わたしも少しだけなら『艦これ』をプレイしたことはある。
ところが、いざアニメの『艦これ』を観る段になって、艦娘の名前が少しも覚えられないのだ。正確に言うと、「顔と名前が一致しない」。同じことだ、結局「顔と名前が一致しない」とは、「キャラの名前を覚えていない」とほとんどイコールだ−−。「どれが赤城?」「どれが榛名?」「どれが如月?」いや、それ以前に、どの艦娘がどこで登場したのか、まだ登場していない艦娘はどんな艦娘なのか、把握できていない状態である。最早、まじめに観ていない。
結局、このことはわたしの『艦これ』アニメ版への取り組みが浅すぎるということである。

とにかく、アニメ作品への馴染みが薄いと、キャラの把握すら覚束なくなる。

ポケットモンスター

もうひとつ、いささか極端な例を挙げよう。
ポケットモンスター』という、国民的TVアニメがありますよね? 現在のタイトルは、『ポケットモンスター XY(エックスワイ)』。言うまでもなく、国民的ロールプレイングゲームを原作とした長寿TVアニメシリーズである。
昨日、サブタイトルが気になって、久方ぶりに『ポケットモンスター XY』を生で観てみた。
主人公の「サトシ」。彼の名前はもちろん”覚えている”。1997年にこのアニメは始まったが、主人公(一応、ね)は「サトシ」で不変である。もちろん顔と名前が一致するし、松本梨香の声も馴染み深い。
あと、「ロケット団」っていますよね? タイムボカンシリーズ三悪みたいな(って言うとむしろわかりにくくなりますか?)立ち位置の、ムサシ・コジロウ・ニャースニャースのことはあとで触れるとして、「ムサシ」と「コジロウ」も1997年以来ずっと出続けていて、もちろん昨夜の放送で顔と名前が一致したし、声優も1997年以来林原めぐみ三木眞一郎で不変である。
あとポケモンについて。
ピカチュウ」。言うまでもなく国民的ポケモンである。顔と名前が一致するし、大谷育江の鳴き声も馴染み深い。ロケット団の「ニャース」。1997年から出続けているキャラで、顔と名前が一致するし、犬山イヌコのしゃべり声も馴染み深い。

「サトシ」「ムサシ」「コジロウ」「ピカチュウ」「ニャース」については、難なく昨夜の放送で把握できた。もう自動的にキャラを把握できた。ただし「ピカチュウ」と「ニャース」は原作の「赤・緑」に登場するポケモンであるから、そういう面でも馴染んでいる。それはともかく、「サトシ」「ムサシ」「コジロウ」の顔と名前は、一生涯一致すると思う。

ところが。
ポケットモンスター』というTVアニメシリーズは、サトシに随伴するレギュラー人物が、副題が変わるごとに、変わるのである。ちょっと前まで「アイリス」っていましたよね? 肌が黒い悠木碧が声あててた少女。彼女はひとつ前のシリーズのレギュラーキャラだ。「アイリス」は表舞台から消えてしまって、あらたにサトシに随伴するレギュラーヒロインが出てきた。それが「セレナ」だ。この「セレナ」という女の子が、実は現在の実質的な主人公なのだが、それはいいとして、サトシに同行するレギュラー人物で、もうふたり、「シトロン」「ユリーカ」のきょうだいがいる。

わたしはまだ「セレナ」「シトロン」「ユリーカ」に対する馴染みが薄く、昨夜の放送でキャラの名前を正直、瞬時に把握できなかった。とくに「シトロン」は、CVが梶裕貴のキャラであることは把握していたものの、検索して名前を確認するまで顔から名前を想起することができませんでした。
ポケモンに関しても、「デデンネ」など大量にニューカマーがいるようだし。

わたしが昨夜の『ポケットモンスター XY』で人間キャラの名前を瞬時に想起できたのは、前に挙げた「サトシ」「ムサシ」「コジロウ」そして声優こそ赤崎千夏になったものの「ジョーイさん」だけだったのである。
わたしぐらいの世代だとサトシに同行するのは「タケシ」と「カスミ」というイメージが強い。顔と名前が瞬時に一致するキャラだ。
けれど、「セレナ」「シトロン」「ユリーカ」の名前が、瞬時に出てこなかった。
強調すべき事実として、『ポケットモンスター XY』は、最早数あるTVアニメの中のひとつにすぎなくなっている、ということ。
山陰地方でBSSテレビの放送にかじりついていた少年時代ならいざ知らず、少なくともわたしにとっては、『ポケットモンスター』シリーズが、数あるTVアニメの中のひとつにすぎなくなっていってしまっている。
たくさんのTVアニメを捌く中での、”捌く対象”のひとつにすぎなくなっていってしまっている。

アイドルマスター シンデレラガールズ

反対に、現クールの番組でも、かなり馴染んできている、アニメ作品として、わたしにかなり食い入ってきている、という番組がある。
一例を挙げると、『アイドルマスター シンデレラガールズ』。これは某ソーシャルゲームが原作で、『アイドルマスター』のモバイル版。アニメ版でも、大量のアイドル候補生が登場していて、346プロの一室に十何人ものアイドルが集結している画面は、壮観ですらある。
アイドルの中に、渋谷凛って女の子がいますよね?
実は、わたしは、初めて触れる作品ながら、「渋谷凛」というキャラの名前を一発で覚えてしまった。惚れ込んでしまったんです、「渋谷凛」に。
第1回の、渋谷駅前や花屋の店先に居る彼女の姿が、とてもまぶしかった。「渋谷凛」は、すみやかにわたしの手の内に入った。「渋谷凛」が勝手にわたしに食い込んできた、というほうが正しいか。いずれにせよ、「渋谷凛」はわたしのお気に入りキャラクターになったし、容姿と名前が瞬時に一致するようになった。
ほかにも「島村卯月」、「本田未央」など、主要キャラを、比較的はやく把握することができた。これは高雄監督以下制作スタッフの描き方が丁寧であるのも一因であろうが、それにしても、『デレマス』と『艦これ』のわたしの馴染み方の鮮やかな対比は、一体何なのだろうか?

アイドルマスター シンデレラガールズ』は、だいぶ馴染んだが、『艦隊これくしょん −−艦これ−−』は、全然馴染まなかった。たぶん『デレマス』に関しては、多くのアイドルの名前を、この先覚えこむことが出来るだろう。なぜ『デレマス』に対してそういう深い態度で取り組むことができそうなのか? 先ほど触れたように高雄監督以下スタッフの努力もあるのだろうが、『カレイドスター』のとある台詞を借りるならば、まるで『デレマス』のステージが、わたしに恋をしているようなのである。言い換えるならば、わたしと『デレマス』は引き寄せられている。


(未完)