話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選

地上波最速の放送局で放映された日が新しい順に列挙していきます。
各話ごとに公式サイトのリンクを貼っておくので、あらすじが知りたかったら参照してください。

櫻子さんの足下には死体が埋まっている  #11(12月16日)

http://sakurakosan.jp/story/?mode=detail&id=11

最近は、夜遅くのアニメをあまり観ない。なぜなら歳をとって夜更かしするのがキツくなったからだ。かつては夜明け前までアニメを観て、起きていたものだが……。それはそうと、深夜アニメにあまり関わらなくなった昨今ではあるが、時々は夜更かしもするし、深夜アニメの秀逸な回に出くわすこともある。その一例が今月放送された本作のこの回であった。

何が秀逸だったかというと、「映像的に鮮烈だった」としか答えようがない。不幸なことに、このアニメは録画をしていなかった。ただ、映像的に峻烈なものがあったのは覚えている。映像の基礎体力が高い。要所要所で鋭い演出を盛り込んでくる。まぁ、そんな形容をしたところで、実際の映像を傍らに置かないとイマイチ伝わらないのだが……。

「今回の櫻子さん、コンテも作画も超抜。」この回が放映された直後に、Twitterでこう呟いた。こんなことを呟いたのは、多分今年初めてだと思う。ところが、本作のハッシュタグをたどってみると、話の内容についてのツイートばかりで、コンテや作画についてのツイートはほとんど見受けられなかった。みんな、話を追うようなアニメの観方しかしていないのだろうか? と、少しがっかりした。話を追うようなアニメの観方の是非はともかくとして、年の瀬の『櫻子さん』11話の超抜コンテ作画は「発見」だった。

カードファイト!!ヴァンガードG ギアースクライシス編  #8(11月29日)

http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/cf-vanguard-g2/episodes/

カードバトルアニメとしてのカタルシスに欠ける〜とか何とか、そんな批評を大昔に某掲示板で見たことがあるが、カードファイト以外の要素を味わうのが、このシリーズの醍醐味であろう。

土曜朝に再放送している『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』みたいなアニメは、カードバトルに焦点を絞っているといえる。しかし、カードバトルアニメも多様である。とくに最近はカードバトル一辺倒ではだめなようで、カードバトル以外の「付加価値」が求められているふしがある。プリキュアの裏枠に移ってしまった『デュエル・マスターズVS』シリーズなんかがそうで、破壊的なギャグで敷き詰められている相当なカオスアニメだった。ならば『デュエル・マスターズVS』から選出しても良かったのだが、あの時間帯はプリキュアを観るのだ。

この『カードファイト!!ヴァンガード』シリーズも、長いことやっているが、カードファイト以外の「付加価値」に重きを置いた、ある意味珍妙なアニメである。そういえば、この企画で初めてわたしが選んだ話は、『ヴァンガード』無印の、ミサキさんが閉ざしていた心を開くエピソードだった(4年前!)。そして、時を経て今回選出したギアースクライシス編第8話も、偶然かどうか知らないがミサキさんがキーパーソンとなる話であった。

ヴァンガード』シリーズの「付加価値」とは何か? 例えばつい最近までやっていたユナサン支部の攻防においては、カードファイトそのものよりも、「洗脳」とか「ルサンチマン」とか「思想」とか、そういったユナサン支部の監獄的な構造にまつわる諸々に、主眼が置かれていたように思う。そういった”諸々”を、なんとかして「付加価値」として解き明かしていきたいのだが……。

ヴァンガード』シリーズの「付加価値」として確実に言えるのは「日常性」だ。少年向けを意図して制作されているのだろうが、わたしの眼にはむしろ「少女漫画的」に映る。日常描写こそが、『ヴァンガード』のキモなのだ。特に主人公がクロノに変わってからは、スカイツリー、浅草といった具体的な東京の地名が強調され、いっそう日常に染み付いた作劇になっているように思える。

ギアースクライシス編8話は、迷えるトコハちゃんの話。かつて迷える小娘だったミサキさんが、迷えるトコハちゃんを暗がりから救い出す。そこにカードバトルアニメとしてのカタルシス微塵もない。しかし、8話辺りにも充満している日常臭さこそが、このアニメの醍醐味なのだ。

おそ松さん  #3(10月19日)

http://osomatsusan.com/story/story_detail.php?id=1000016

いろいろな意味で、この話をリアルタイムで観られた人は勝ち組だと思う。

これも『櫻子さん』と同じように、深夜たまたまAT-Xを流していたら眼に飛び込んできたアニメだ。衝撃を受けた。個人的には『日常』が初めて眼に飛び込んできた時以来のインパクトだった。オムニバスアニメとして、微塵の隙もない完成度だった。パロディも下ネタも、まさしく「深夜番組」のそれであり、赤塚不二夫の精神を受け継いでた。

京アニ? PA? ちゃんちゃらおかしいよ。いま、わたしの中で一番熱いアニメ制作会社はどこか。studioぴえろだ。

ジュエルペット マジカルチェンジ  #29(10月17日)

http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/jewelpet7/episodes/index_2.html

個人的に、今年最大の収穫アニメは『ジュエルペット マジカルチェンジ』だった。

偶然眼に飛び込んできた第5話の「メロンパンカーニバル」に衝撃を受け、以降も破壊的な作風をニヤニヤしながら楽しんできた。ルビーが皿になったり、サンリオキャラ同士が怪獣みたいに戦ったり……。そういう破壊的な作風は、サンリオアニメとして、今に始まったものではないだろう。しかしわたしとしては、「次に何が飛んで来るかわからない」感触が食い込んできたのは『マジカルチェンジ』が初めてだった。「次に何が飛んで来るかわからない」。これ、TVアニメとして最も重要な点だと思うんだよなあ。

また、ジュエルペットシリーズの最終作品となったという事実も、重い意味を持っていた。

たぶん、全日帯アニメと深夜帯アニメの両方を十二分に楽しんでおられる方なら、このアニメから何かしら選出してくれると思うから、あえてわたしはギャグ色の強くない第29話「恋するアイドル」を選びたいと思う。どんな話かは、DVDを借りて観てみてください(おい!!)。まぁ、騙されたと思って、こういう機会に少女向けアニメを漁って観るのも良い。

29話メインヒロインたるラリマーの声優は、高垣彩陽。高垣が出るアニメにはハズレが少ない。高垣とわたしの絆が、より一層深まってしまった。

Classroom☆Crisis  #11(9月11日)

http://www.classroom-crisis.com/story/story_11.html

TARI TARI』以来、オリジナルアニメにおける男女の絡みの淡白さが、どうも気になって仕方がなかった。昨年の『天体のメソッド』にしても、わざと男女のまぐわりから眼を背けているフシがあった。

まぁ、そんなこと、「お前の主観に過ぎないだろ」と言われればそれまでだが、わたしはオリジナルアニメにおいて、男女の絡みの濃厚さを渇望していた。

そしたら本作で、霧羽ナギサと瀬良ミズキが濃厚にまぐわる回を見つけた。たしかに、アニメで恋愛は表現しにくいかもしれない。だが、オリジナルアニメにおける男女の絡みの濃厚さを渇望していたわたしは、この回を観て軽いカタルシスを覚えた。

ところで、このアニメは、所謂「名作」として語り継がれることは無いと思う。オリジナルアニメでも、『カウボーイビバップ』『カレイドスター』のように10年以上「名作」として語り継がれるアニメがある。昨年の『グラスリップ』や、このあとで挙げる『プラスティック・メモリーズ』そしてこの『Classroom☆Crisis』なんかは、そういった名作オリジナルアニメの対極にあるといってもいい。でも、いいじゃないか。そういった「波乱」を起こしたアニメがあっても。
ちなみに、わたしは漫画では『ブラック・ジャック』や『めぞん一刻』よりも、『ドカベン』や『スクールランブル』をよく読むタイプだ。

城下町のダンデライオン  #10#11(9月10日)

http://www.tbs.co.jp/anime/dande/story/story10.html
http://www.tbs.co.jp/anime/dande/story/story11.html

奏様と修様の過去にまつわる家族愛が強く印象に残った。いや、それよりも、これを選出した理由は、「2話連続放送」を初めてリアルタイムで体験したという個人的な理由である。

かつて、フジテレビの深夜アニメ枠は混迷を極めていたらしい。2話連続放送や3話連続放送も珍しくなかったらしい。最悪の場合最終話まで放映できなかったアニメもあるという。
今回のケースは、そもそも放映局がTBSだしあまりフジの件とは関係がないが、それでも2003年前後の深夜アニメの混迷をリアルタイムで体感できなかった、「憧憬」を覚えていたわたしにとっては、今年の『ダンデライオン』2話一挙放送は、8年前の『瀬戸の花嫁』早朝放送(テレ東)以来の一大イベントだった。

それが声優!  #1(7月7日)

http://soregaseiyu.com/story/episode01.html

http://d.hatena.ne.jp/rolandbarthes1980/20141231/1420012776

今回、わたしは、第1回をひとつも選出しなかった。第1回をパブロフの犬みたいに選出するのは安易だと思ったからだ。この作品がいいね、と思って、早押しクイズみたいに第1回に即決する。これを戒めようと思った。だから来年以降も、たぶん第1回は選出しないと思う。

すみません、撤回します。ほんとう有言不実行だなお前は!!!はい、仰るとおりです。だがしかし、このアニメの第1話はほんとうに興味深く、没入してしまったんである。

それが声優!』第1話では、アフレコの現場の様子が詳細に描写されている。その説明を聞くだけでも非常に勉強になったし、主人公が初めてのアフレコに臨む緊張感には思わず感情移入してしまったし、先輩の声優に「あんなこともできないようじゃこの先が〜」と小言を言われるシーンなんか胸を締め付けられるようだった。

個人的な話で恐縮だが、職業訓練ピッキングをやったことがある。キーホルダーを分別し、正しい場所に入れ、足りなくなったら補充する。何人もの人間が入り乱れて、キーホルダーの分別に参加しているのだが、その情景が、限られたマイクで何人もの声優がせめぎあうアフレコ現場に通じるものがあるーーそう思ってしまった。

ダイヤのA -SECOND SEASON-  #13(6月29日)

http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/diaace/episodes/index_3.html

日常系が流行っている。日常系で『琴浦さん』第1話Aパートみたいなことをやるのはご法度である。甘く、優しい世界。今期、わたしは、『ご注文はうさぎですか??』も、『ゆるゆり さん☆ハイ!』も、非常に楽しく観させてもらっている。まさしく日常系の、甘く、優しい世界。だとしたら「亀裂」と名付けられたこのエピソードの人間関係のギスギス感は、日常系の対極にあるものだ。

人間関係のいざこざ、人と人のあいだの軋轢。むしろ、アニメよりもTVドラマでよく観られるものかもしれない。人間関係の不穏さを感じるアニメは、(特に深夜帯において)あまり観られない。このエピソードにおける青道高校野球部の人間関係をめぐるギスギス感は、現行のTVアニメ全体を見渡すと、かなり異色のもののように思う。しかし、わたしたちは、人間関係のいざこざ、人と人のあいだの軋轢から、かなり眼を背けすぎていたのではないだろうか。

プラスティック・メモリーズ  #5(5月2日)

http://www.plastic-memories.jp/story/05.html

正直、このアニメを、このアニメのこの回を選出するのには、かなり勇気が必要だった。

このアニメの設定について、「前提からして間違っている」というふうな、かなり厳しい意見も見られた。「整合性」なんてどうでもいいと思っているわたしには、プラメモの不評は精神的にかなりこたえた。

それでも、このアニメの、この回は、映像として図抜けていると思う。福田道生という演出家は、印象的なコンテをよく切る。映像として図抜けているのみならず、さんざん槍玉に挙げられている「脚本」も、この回はテンションが高くて、素直に、好きだ。

アイカツ!  #115(1月8日)

http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/aikatsu/episodes/index_6.html

「問いの追求として、出発点は到着点を含むという」。岩波文庫三木清パスカルにおける人間の研究』の表紙には、こう書かれている。出発点は到着点を含む。まさしく、アイカツの、このお正月話は、出発点であると同時に、到着点である。

むすびに代えて 全日帯アニメと深夜アニメの立ち位置の逆転

「全日帯アニメが深夜アニメで、深夜アニメが全日帯アニメである。」何を言ってるんだこの人は、と思うかもしれない。しかし、わたしの、現在のTVアニメに対する認識として、「全日帯アニメが深夜アニメで、深夜アニメが全日帯アニメである」こんなフレーズが、立ち現われてくるのである。

すなわち、正確な統計こそないが、典型的なアニメファン群を想定すると、深夜アニメは、観る人が多くて、かつての全日帯アニメのような立ち位置である。人気がある。対して、全日帯アニメ(朝、夕方、ゴールデンタイムのアニメ)は、アニメファンにあまり注目されない。ノーマークになりがちで、プリキュアと「日5枠」しか観ないというパターンがありがち、かつての深夜アニメに近いのではないだろうか。

「かつての深夜アニメ」という時、何を念頭に置いているのか。ずばり最初の『To Heart』の頃の深夜アニメである。現在のスタイルの深夜アニメはまだ始動したばかりで、夕方アニメの添え物のような立ち位置だった。小学校低学年の頃から「アニメージュ」「アニメディア」を読んでいたわたしから言わせてもらえば、そうだ。

過激なことを言ってしまえば、プリキュアの裏枠の『デュエル・マスターズVSR』の立ち位置が、最初の『To Heart』の頃の深夜アニメのような立ち位置になっているーーこう仮定してみる。全日帯アニメと深夜アニメの位置が逆転しているのである。朝が夜、夜が朝。むしろニチアサキッズタイムの裏枠や、かつての火曜朝の『マイリトルポニー』枠のようなところに、「超大穴」は隠れているような気がするのだが……。これも戯言である。