UHFアニメ史へのおぼえがき

UHFアニメ」という時、テレビ神奈川テレビ埼玉チバテレビサンテレビKBS京都等の独立局で営まれるTVアニメーションという意味合いが伝統的に強いように思う。そこには、TOKYOMXは含まれない。ここでもやはり、MXが本格的に参戦する以前の独立局アニメを扱いたい。

テレビ神奈川のアニメを全部録画している同級生がいた−−」by大学の同級生

端緒

『レジェンドオブバサラ』(1998年)という少女漫画原作アニメに、UHFアニメの端緒は求められるようである。『わんころべえ』はMXが独自製作したアニメだったが、ここで取り扱う「UHFアニメ」とは程遠い。
『レジェンドオブバサラ』は、
1独立局のみでの放映
2遅い時間帯

というふたつの要素を兼ね備えている。とくに1の「独立局のみでの放映」という意義は大きい。キー局を頼りにしなかったのである。

美少女ゲームのアニメ化

初期のUHFアニメには、美少女ゲーム原作アニメが多い。leafの『ToHeart』『こみっくパーティー』に加えて、ごく初期に『下級生』『同級生2』。しかしleafの『ToHeart』『こみっくパーティー』の存在が際立つことは否定出来ない。
ToHeart』と『こみっくパーティー』を隔てる点として、セル制作からデジタル制作へ、という点が強調される。前者からは90年代末期の濃厚なセルアニメーションの雰囲気、後者からは00年代初期の(今から観ると)どぎつい彩色その他……が実感できると思う。
ともかくleafというメーカーの存在は大きかったのである。数年下ると、サーカスやオーガストといったメーカーが浮上してくる。

WOWOWノンスクランブル枠からの移行

正確な統計はとらなかったものの、2001年頃からWOWOWノンスクランブル枠がじょじょに解体してくる。少なくとも20世紀末の全盛期は過ぎたように思われる。『鋼鉄天使くるみ2式』というアニメはWOWOWからの流入であった。
WOWOWノンスクランブル枠を現在のBSイレブン深夜枠と捉えてもいいのかもしれない。

キッズステーションとの結びつき

2000年代、UHFアニメキッズステーションとの結びつきが非常に強かった。わたしの家庭では2002年度からケーブルテレビでキッズステーションが観られるようになったのだが、『ハッピーレッスン』『アベノ橋魔法☆商店街』『プリンセスチュチュ』『奇鋼仙女ロウラン』『成恵の世界』『ダ・カーポ』『げんしけん』こういった作品群のCMが頻繁に目についた。また例外となるが『よばれてとびでてアクビちゃん』はキッズステーションの子供向けアニメという印象が強いが、広い意味でUHFアニメに入るようだ。

らいむいろ戦奇譚』事件

2003年1月、独立局のサンテレビは、『らいむいろ戦奇譚』と『ストラトス・フォー』を夕方枠に編成した。このことが特に『らいむいろ戦奇譚』について波紋を呼ぶこととなる。
らいむいろ戦奇譚』における性的描写が主な問題となり、同作が夕方枠に相応しくないということでクレームが付き、BPOで取り上げられる事態となった。周知のかたも多いかと思うので、これ以上詳細な説明は省くが、規制が緩いUHFアニメの特質が裏目に出てしまった事例であったと思う。

UHFアニメに対する自覚

2003年は世界陸上があった年である。末續慎吾が200メートルで3位に入った世界陸上である。末續のレースは深夜3時ごろにならないと始まらない。末續待ちで別のチャンネルを観る。そしてたまたまつけたキッズステーションに『ダ・カーポ』の放送が映っていたのである。
どうも『ダ・カーポ』と『君が望む永遠』によって、わたしのUHFアニメに対する自覚は芽生えたようである。
といっても、UHFアニメに対する印象は決して芳しいものではなかった。安っぽい・あざとい・エロ・萌え……云々。「深夜アニメより、夕方枠のアニメのほうがいいや」そういう実感を持っていた。
「チープさ」は長年UHFアニメのキーワードとなる。けれども、ここ数年の東京MXの番組にはそういった概念は通用しなくなってしまった。
ともかくUHFアニメを一段低いものととらえていたのである。

君が望む永遠』をビデオに録画した

2003年の秋から冬にかけ、『君が望む永遠』が2ちゃんねるのアニメ板で話題を集めていた。好奇心にかられ、親に隠れてキッズステーションの放映をVHSビデオに録画した。速瀬水月が主人公の友人とまぐわる回で、刺激的というよりも、TVアニメにはこういう世界もあるのかと思ったはずだ。騎乗位が描写されていたのだから。
夕方のアニメと、キッズステーションの深夜にやっているようなアニメは、本質からして違うのではないか? そう思った。

特定の原作者・会社との結びつき

UHFアニメには介錯の漫画作品が多く供給された。すなわち『円盤皇女ワるきゅーレ』『神無月の巫女』など。またufotableは初期にUHFアニメを根城にしていた。すなわち『住めば都のコスモス荘』『ニニンがシノブ伝』『フタコイオルタナティブ』など……。
またトライネットエンタテインメントというプロデュース会社があり、2005年にUHFアニメの作品数が激増した。すなわち『こいこい7』『IZUMO』『萌えよ剣』『はっぴぃセブン』『ラムネ』、翌年には『吉永さん家のガーゴイル』『つよきす』。玉石混淆の作品をUHFアニメに供給し賑わせた。

放映枠的な特質

ロウラン/プリンセスチュチュ瓶詰妖精/BPS、「プリンセスアワー」、はにはに/windと、15分枠アニメを2つ組み合わせたコンプレックス枠も多く見られた。
また「アニメ魂(アニメスピリッツ)」という名称のついた枠もUHFアニメには存在し、2008年の『ストライクウィッチーズ』辺りまで残存することになる。

表現規制の緩さ

テレビ東京表現規制がきつく、深夜帯でもパンチラを描写できなかった。『一騎当千』に代表されるようなパンチラ、あまつさえ性的描写も含んだ作品の受け皿としてUHFアニメ枠は機能していた。
例えばテレビ東京系のアニメを観ている時、『一騎当千』のCMが流れて「合法パンチラ! 合法パンチラ!」と実況スレで絶叫していた。

オリジナルアニメ

エロゲーラノベ・萌え漫画といった原作に頼らないオリジナル企画もじょじょに増えていき、『魔法少女リリカルなのは』はエロゲーのスピンオフ作品であったものの続編作によって完全に自立した。そのほか2004年には『光と水のダフネ』『うたかた』といったオリジナル企画が出現した。

2004年〜2005年付近の動向

ToHeart リメンバーマイメモリーズ』『ToHeart2』『下級生2』『こみっくパーティーRevolution』『ダ・カーポ セカンドシーズン』と、2000年前後に供給されていた美少女ゲーム原作の次の世代が供給されるようになった。『Canvas2〜虹色のスケッチ〜』はエロゲー原作であるものの異彩を放っていた。というのも角川枠だったからである。『Canvas2』が角川枠のUHFアニメだったことはもっと強調されてもいいと思う。ちなみに『Canvas2』の後番組が『涼宮ハルヒの憂鬱』である。
この最中、『げんしけん』『バジリスク『エマ』といった青年漫画原作アニメが異彩を放っていた。また『美鳥の日々』がUHFアニメという媒体を選択した。少年サンデーがUHFアニメに立ち入ったのである。
そのほか、『好きなものは好きなんだからしょうがない!!』はボーイズラブを主眼としたアニメであり、成人男性層だけでなく女性層にも訴えかけるコンテンツも出始めた。

2005年10月の変化

灼眼のシャナ』の原作は、電撃文庫の看板ラノベで、そういった意味でUHFアニメの枠にアニメ版『シャナ』がおさまったのはエポックメイキングであった。MBSとの結びつきという意味では、『地獄少女』も同様。『地獄少女』はメディアミックスこそあったものの実質オリジナル企画で、関西地区(MBSアニメシャワー)で好視聴率を記録した、らしい。ともかく2005年10月の改編からは、UHFアニメの裾野が広がったのを感じるのである。『ノエイン もうひとりの君へ』という本格的なSFアニメが始まったこともその証左となりはしないか。『ノエイン』はもしかしたらUHFアニメで初めての本格的なSFアニメではないだろうか。

玉石混淆

その一方で2006年に入り『落語天女おゆい』『吉宗』といったいわゆる「珍作」も散見されるようになり、放映数の増加に伴いまさに玉石混淆の様相を呈す。そんな中で『Canvas2 虹色のスケッチ』の後番組として『涼宮ハルヒの憂鬱』は始まったのである。