ポケットモンスター・ジ・オリジン

レポート1 レッド

 まず、涙が出るほどうれしい、この企画。
ポケットモンスター緑』しか俺はプレイしたことがないから。

 原作依拠への意識はたしかに過剰だったかもしれないし、タケシの「倍返し」発言とか世間の尻馬に乗り過ぎなところはあったけど、セリフの端々でびんびんテンションが上がってしまった。

 1話の冒頭からして殆ど原作準拠だもんね。
 フシギダネがハブられて酷いみたいなことツイッターで突っ込んでる人大勢いたみたいだけど、あれが「原作通り」なんだよ。
 ピカチュウイーブイになるよりはあれがベストだよ。
 たしかにアニメ『ポケットモンスター』の首藤剛志脚本は身につまされるというか、ヒリヒリと記憶に残る脚本だった。
 今は亡き首藤さんが原作通りはいやだ! と言ったのか、まったくゲームと内容をチェンジしてきたのは正解で、◎をあげられるシリーズ構成だった。

 でも広田光毅さんと笠原邦暁さんが共同で練ったと思われるこの脚本もまた◎。
 まるで1997年当時の首藤脚本に挑むかたちで。
 まあ4話を観た人なら分かる通りこの構成は「画竜点睛を欠く」ものなんですが、ぜんぜん「竜頭蛇尾」じゃないし。

 とくに1話はレッドとグリーンの対比を描きそれを第三者視点からオーキド博士が見守る構図がハナマル。

レポート2 カラカラ

 原作通りだから、キャラの名前がすぐ把握できる。
 シオンタウンで出てきたレイナちゃんはオリジナルだったけど。メインキャラでゲームの外部からねじ込んだキャラはこの子だけだった。

 レイナちゃんは体型的にレッドと同年代の設定。
 ちなみにレッドもグリーンもアニメ版のサトシ、シゲルと比べ年長に見える。
 設定ではどうか知らないけど、俺にはレッドとグリーンは12歳程度に見えた。
 グリーンなんて声変わりしてるしな。
 とにもかくにも、カスミ、エリカ、ナツメといったジムリーダー勢が顔見せ程度だったので必然的にレイナがヒロイン格になる。

 レイナという名前でピンと来るのはおっさん世代だけど。(レイナ→マシンロボ葦プロ→2話を制作したジーベックの前身 という連想で。)
 それはどうでもいいとして。
 たしかにカラカラガラガラ母子の問題をここで極大化したのは理にかなっている。
 まず、ポケモンが死ぬ世界だということの提示になっている。当時(9歳のころ)、ゲームをプレイしていて特に印象に残った部分の一つが、シオンタウン、ポケモンタワーのくだりだった。システム上はポケモンのHPが0になっても戦闘不能になるだけだから、余計に「ポケモンのお墓が実は存在する」という設定がインパクトを与えたのだ。
 たしかにゲームシステム上は矛盾した物語設定だけれど、物語上の矛盾よりもそびえたつポケモンタワーのシリアスを俺は当時から上に取っていたんだ。2話を丸丸カラカラに割いてくれて幸せな気分だった。

レポート3 サカキ

 トキワジムで、サイホーンサイドンだけでサカキがレッドを迎え撃つなんてゲームで見たことがない。
 これは記憶と照らし合わせれば脚本家の独自解釈が働いていると思った。
 しかもその拡大解釈がうまく物語に奥行きを与えているから大したもんだ。
 ほんとうに、手放しで褒めちゃいたい部分が今回の放送は多いんだから……。

 サイドンサイホーンの進化形であることは、『赤・緑』世代なら、常識。
 つまり同系統2体だけでレッドの6体をサカキは迎え撃った。
 それは、将棋でそこそこ強い駒を4牧落とすようなものだろうが、重要なことはサカキが使うポケモンの枠を1/3に絞ったこと。

 サカキが枠を1/3に絞ったことで、ガチのバトルを演出する効果が生まれた。サイホーンサイドンという重量級2体だったので効果は抜群だった。ペルシアンなんて小細工がないんだもん。
 サイドンとの決着もまさに「力と力の勝負」だった。リザードンサイドンを「ちきゅうなげ」で倒すんだもんなあ。
 作劇上ピカチュウが美味しいところをもっていかざるを得ない普段のTVシリーズと違って、作画もあいまってズシンズシンと重さが感じられるバトルで、俺は大いに満足だった。
 
 このサカキとの対決パートが一番今回のスペシャルで好きだったな。
 3割くらいオリジナルなんだけど。
 ここで『オリジン』だけど10割原作依拠じゃない、ってことに気づいちゃった。

レポート4 リザードン

 メガシンカだよなあ……。
 たしかに反則だよ。でもイエローカード一枚で済まされるレベルだからなあ、最新作の『XY』の要素を最後の最後でねじ込んだのは。
 フジ老人が見たこともないアイテムをレッドに渡したところで嫌な予感はしたけど的中してしまった。ただミュウツーマスターボールで捕獲してしまうとむちゃくちゃ味気ないので、妥当。

 それより、ポケモンリーグはたしかに早送りだったけれど、グリーンとの決着後やさぐれるグリーンをオーキドが原作通り叱りつけたのには大感動だった。
 あの説教はゲーム版でも熱かったから……。
 しみじみとした家族愛みたいなものがゲーム版で出てきたのはあそこだけだから。
 これでグリーンも人間的にレッドと同じ土俵に立てるようになり、一件落着。

 最初から150(151)匹設定じゃなくて今作はデフォルトが149匹だったが、最後のパズルのピースがミュウツーで、ミュウツーを捕ってもまだミュウが残っているという結末も非常に良かった。
 原作通りではなかったけど、ハナダの洞窟で完結だったもんねー。

 だからこそ唯一の不満はマサキがまったく出てこなかったこと(笑)。
 マサキ出してよー、好きなのにー。
 原作準拠だけどあくまで「準依拠」だから、全体の三分の一くらいオリジナル要素で肉付けしたということだったんでしょう。
 とにもかくにも、作画も良かったし、いろいろGJ! だった。